12.心を狩る者

その日、あかねちゃんは、また、あの声を聞きました。けれど、その時のあかねちゃんは、泣いていなかったし、悲しくもありませんでした。でも、その声は、はっきりと聞こえました。

  “明日、1人になっちゃダメだよ”

 次の日、あかねちゃんが学校へ行く支度をしていると、
「あかねちゃーん!学校行こーう!!」
「みずきちゃん!わかった、ちょっと待ってて!!」
「うん!」
みずきちゃんが迎えに来てくれたので、あかねちゃんは急いで準備を終わらせました。
「みずきちゃん、お待たせー」
「じゃあ、行こう」
そうして、2人は学校へと出発しました。
何分か歩いて、みずきちゃんが口を開きました。
「そうだ。あかねちゃん」
「なーに?」
「私ね、昨日、不思議な声を聞いたの。一人になっちゃダメだよって言ってた」
「あ…。それ、私も聞いた!」
「ホント!?」
「あとね、前に熱を出して学校を休んだ日も、聞いたよ」
「そうなんだ」
「あの時は、泣いた人はなにかを持ってるって言ってたんだけど…」
「へぇ。もしかしてさ、その"なにか"って、心じゃない?」
「だったかも…。熱があったから、よく覚えてないんだぁ…」
すると、

  “フフッ♪忘れちゃったの〜?”

声が、聞こえてきました。
「みずきちゃん、今…」
「うん、聞こえたね」

  “君たちになら、僕のこと教えてあげるよ”

「え…」
突然、2人の目の前に、一人の男の子が現れました。
「誰!?」
「誰って、さっきから話してたじゃない」
「えっ。じゃあ…」
「そ。僕だよ」
「えっと…。名前…は?」
「それも忘れちゃったの〜?」
「いいから教えなさいよ」
みずきちゃんが少し怒ったように言いました。
「ニコロ。僕の名前は、ニコロだよ。君たちは?」
「私は、あかねだよ」
「みずきよ」
「そっか」
ニコロは笑顔で頷きました。
「あ、もう行かなきゃ。それじゃあね〜♪」
「ま、待って!!」
「なーに?」
「昨日の…一人になっちゃダメだっていうのは、どういうことだったの?」
「それは私も気になってた」
「あれはね、あかねが何かに狙われてるんだ」
「何かって、何よ」
「分からない。でも、少なくとも、僕達の同類ではないよ。僕達も、人間が好物だけど…」
「貴方達は人間が好物なの?だったらなんで、ニコロは私たちに何もしないの?」
「それは、僕が心を狩る者だからさ。心を狩る者は、人間を食べちゃいけないんだ」
「ふーん。で、そのあかねちゃんを狙ってるのは、何者なの?」
「心を狩る者でないとすると…。下級の妖怪、とかかな?」
「そう…」
「じゃあ、僕はもう行くね。また今度〜♪」
「あっ…」
一瞬で、ニコロの姿が見えなくなりました。

  “大変なのは、これからだよ。気をつけて、あかね”










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